『旅のスケッチ』トーベ・ヤンソン

『ムーミン』シリーズでお馴染みの、フィンランドを代表する作家トーベ・ヤンソン。本作は、彼女が『ムーミン』シリーズを生み出す前の、20代の頃に書かれた初期短編集です。
週末のパリの喧騒に鬱陶しげなヴァイオリニスト、ドレスデンの郵便局に手紙が届いていないか確認することを生き甲斐とする男、カプリに新婚旅行に来た夫婦など、戦前のヨーロッパの各都市を舞台に、魅力的な登場人物たちの出来事が、皮肉とユーモアと愛に満ちた文章と、愛らしい挿画の数々によって描かれます。
北はヘルシンキから、南はイタリアのリゾートまで、戦前の少し暗い雰囲気の漂うヨーロッパを、若き芸術家トーベ・ヤンソンが旅して、描いた、初々しく、キラキラと輝く珠玉の8作品が、美しい装丁の書籍の中に綴じられた一冊です。

幅允孝(はば・よしたか)
有限会社BACH(バッハ)代表。ブックディレクター
人と本の距離を縮めるため、公共図書館や病院、学校、ホテル、オフィスなど様々な場所でライブラリーの制作をしている。安藤忠雄氏が設計・建築し、市に寄贈したこどものための図書文化施設「こども本の森 中之島」では、クリエイティブ・ディレクションを担当。最近の仕事として「早稲田大学 国際文学館(村上春樹ライブラリー)」での選書・配架、札幌市図書・情報館の立ち上げや、ロンドン・サンパウロ・ロサンゼルスのJAPAN HOUSEなど。神奈川県教育委員会顧問。